無題 |
…あの日。 目の前に、飛び散った、赤。 あざやかな…血の、赤。 …二度と、思い出さない様に、と。 …心の底に閉じ込めて。 −午後10時。 ユーリが、いつも散歩へ行く時間。 今日は満月。 ユーリが好む夜。 窓の、開く音。 その音と同時に羽の広がる音。 …満月の光を充分に自分の身体に受けて。 まるで自分が、月の一部になったかの様に。 その宙を、気持ち良さそうに泳いで。 皆、その姿にはいつも見愡れないばかりで。 …が、何故。 その美しい瞳に浮ぶ、不安という名の濁りは。 ためらいの無いその視線が求めるのは…何なのか。 何故……悲しそうに見えるのは。 「ユーリ、今日も散歩っスか?」 「ああ…」 「オレはもう寝るっス…けど、あんまり遅くならない様にしてくださいね。 体調悪くなったら大変っスから。」 「ソウだよ!?いっつも夜更かししたらダメなんだぞう!?」 「ああ…分かっている」 「じゃあ、おやすみっス」 「おやすみーーっ☆ユーリ☆」 「…ああ。」 あの日。 目の前に、飛び散った、赤。 あのあざやかな、赤は。 …自分が…自らの牙で。 二度と、思い出さない様に、と。 …今を。この二人と過ごせる、この時を。 …幸せな、この今を。 壊したく、ないから。 ……ずっと。 この心に、閉じ込めて。 |
結監様から戴きましたvありがとうございますvv |
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